影
突然私の前に黒い物が現れた
それは私を一瞥もせず角を曲がった
私もそれを追いかけ角を曲がった
そこには人の形をした影がいた
よく見ると私には影がない
その影はまさしく私の影だ
影を取り戻そうと
近づいてみるが
私をあざ笑うかのように
影はまたその先の門を曲がった
今度は影に気づかれないように
そっと近づき
石畳の上の影に
思いっきりかぶさってやった
ふいをつかれた影は
逃げそこね私の物になった
今度は逃げられないように
影をしっかりホチキスで止めてやった
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私の寂しい心と寂しい人々の心の穴を埋める詩集です。 つたない詩の数々ではありますが、どうか一人でも多くの方がこれを見て何か感じていただければと思います。